イギリスでは現在、居住権(Right of Abode)を持つすべての英国市民、および欧州経済地域(EEA:European Economic Area)の加盟国民に対しては、イギリスにおける居住と就労に制限をしていない。
しかし、2004年5月のEU拡大以前のEEA加盟国民に制限はないが、EU拡大で新規に加盟した8カ国(加盟したのは10カ国だが、そこからキプロス、マルタを除く)からの労働者に対しては、労働者登録計画(WRS:Worker Registration Scheme)による管理を行っている。
イギリスは2004年5月のEU拡大に際して、東欧の新規加盟国からの労働者に労働市場を開放した数少ない国のひとつ(ほかにアイルランド、スウェーデン)で、2004年以降に東欧からの移民労働者が急増した。
2004-2005のイギリス内務省の統計によると、2004年5月-2005年12月の登録者数は約32万9,000人。政府が当初見積もっていた年間1万3,000人という数字をはるかに上回った。そして8カ国のうちポーランドは全体の59%を占め、その数は群を抜いている。
一方、EEA加盟国以外の国の人がイギリスで働くには、原則的に労働許可の取得が義務づけられている。(一部、労働許可を必要としない就労もある)
以上 参考:UK VISA Home Page/独立行政法人労働施策研究・研修機構「労働政策研究報告書No.59」(2006年5月19日)
映画の背景
イギリスの移民労働者受け入れ制度
イギリス政府の非正規労働者を保護するための政策
映画にも描かれているが、移民労働者の多くは、正規労働者のような権利を保障されていない場合がある。2008年1月30日、イギリスのある非閣僚議員が1つの法案を提出した。ニューカッスルアンダーライムを選挙区とする労働党下院議員ポール・ファレリーによる「派遣労働者(不利益取扱い防止)法案」。基本給、病気の扱い、有給休暇などの主要な事項について、派遣労働者にも正規雇用者と同等の権利を付与することを求めた法案である。しかし3月2日、法案は第二読会を通過することなく消えてしまった。「会期切れ」が理由だった。サッチャー主義の登場以来、イギリスの労働環境は大きく変わってしまったが、新自由主義によって派遣労働者や移民労働者は、さらに厳しい状況に置かれていると言わざるを得ない。
「移民」と呼ばない日本の実情〜これは遠い世界のできごと?
2008年4月13日の朝日新聞に“「移民」と呼ばない日本”(大野博人)という記事が掲載された。ロンドン在住の筆者は、日本で働く外国の人達を政府が“外国人労働者”と呼び、“移民”と呼ばないことに疑問を呈している。2006年に日本政府がまとめた滞在する外国人を対象とした「総合的対応策」に触れ、“日本でも政府が対策を急務と考えるほどに移民は増えているということだろう。ただし「外国人労働者」という別の名前で”と大野氏は指摘。記事の中には「日本社会にある不安を刺激したくなくて政治家も行政もメディアも移民という呼び方を避けて来たのでは。でも在留者の多くは実態としては移民でしょうね」という外国人政策研究所の石原進理事の言葉もある。
『この自由な世界で』で描かれているイギリスの状況は、日本人にとって遠い世界ではない。たしかに私達も“自由市場の世界”に生きているのだから。
『この自由な世界で』で描かれているイギリスの状況は、日本人にとって遠い世界ではない。たしかに私達も“自由市場の世界”に生きているのだから。
